ap bank fes ’25 at TOKYO DOME ~社会と暮らしと音楽と~ オフィシャルレポート DAY2

東京ドームで開催された『ap bank fes ’25 at TOKYO DOME 〜社会と暮らしと音楽と〜』。
開演前のビジョンには環境負荷の軽減への取り組みが映し出されていた。これまでも環境プロジェクト支援や災害復興支援を行ってきた『ap bank fes』だが、今回のフェスでは、能登エリアの食材を取り入れたフードを販売し収益を能登半島地震の復興支援金に充当するオフィシャル・フード「kurkku kitchen for 能登 produced by ap bank & KURKKU FIELDS」など「食」への取り組みも行われていた。



ステージはSIDE CORE・玉田豊夢・アオイツキによるオープニングパフォーマンスからスタート。
東京の地下を疾走する映像を手掛けたSIDE COREは「都市空間における表現の拡張」を追求してきたアートコレクティブ。アオイツキは東京QQQのメンバーでもあるアオイヤマダと高村月によるユニットだ。二人がステージの上に「25.2.16」と日付を書き、ap bank fes ’25の2日目をスタートさせた。


Band ActのトップバッターにはSaucy Dogが登場。1曲目の「いつか」から「シンデレラボーイ」へ、スリーピースのシンプルなバンドサウンドに情感豊かな歌声が広がっていく。「子供の頃から家族全員でMr.Childrenの大ファンで。なので今日、私の夢がひとつ叶いました」と、せとゆいか(Dr)は幸せそうに語る。「現在を生きるのだ。」「夢みるスーパーマン」を熱を込めて歌った石原慎也(Vo/g)は、「あなたが普段思っている悩み事を全部忘れろなんて言いません。でも、ちょっとでも力になれたら、あなたの心があたたかくなればと思ってます」と語る。ラストの「優しさに溢れた世界で」では、「毎日仕事頑張ってる人! 学校頑張っている人! 家事育児頑張ってる人! 男子! 女子! 生きるの頑張ってる人!」と、シンガロングを呼びかける。聴く人に優しく寄り添うSaucy Dogのメッセージを、思いのこもった力強い歌と演奏で届けてくれた。



Saucy Dog
- いつか
- シンデレラボーイ
- 現在を生きるのだ。
- 夢みるスーパーマン
- 怪物たちよ
- 優しさに溢れた世界で

maco marets
- Crunchy Leaves
- Amaizng Seaso
低く柔らかい声でラップを披露したmaco maretsのパフォーマンスを挟み、続いてのBand Actとして登場したのはマカロニえんぴつだ。
ap bank fes初出演、東京ドームに立つのも初めてだと言う彼らが見せてくれたのはロックバンドとしての堂々とした佇まい、そして音楽に対しての真っ直ぐな愛情だった。「然らば」「レモンパイ」で客席を惹きつけ、はっとり(Vo/G)は「素敵な場所に立てていることが、誘われた時からずっと嬉しいです」と語る。
「リンジュー・ラヴ」ではしっとりとしたバンドサウンドに力強いメロディを歌い上げ、「なんでもないよ、」ではオーディエンスのシンガロングが響く。「音楽は、そこにあるだけで、優しさとか情熱が自然と集まってくる。そんなすごい力を持っているんです」とはっとりは語る。「今日は仲間にしてくれてありがとうございました」と告げて披露したラストの「ヤングアダルト」まで全6曲。音楽の力を実感させてくれるようなステージだった。



マカロニえんぴつ
- 然らば
- レモンパイ
- リンジュー・ラヴ
- 恋人ごっこ
- なんでもないよ、
- ヤングアダルト
1日目と同じく、Bank Band with Great Artists のステージはビジョンに映し出された『Break1 / Movie ~ 殻を破って』を経てスタートした。
「forgive」に続いて披露された「トーキョー シティー ヒエラルキー」はHEATWAVEのカバー曲だ。「今日もどこかで 沢山の天使達が夜のトーキョーにそっと囁きかけている」という歌詞には、この曲がこの場所で歌われることの意味合いを感じた。
Bank Band
- forgive
- トーキョー シティー ヒエラルキー
そしてmiletが登場。小林武史と亀田誠治による紹介VTRでは「どこまでいくかわからない感じがする」(亀田)、「チャレンジしている、枠をはみ出していく」(小林)と紹介されていたが、そのステージはシンガーとしての底知れないポテンシャルを感じさせてくれるものだった。「Higher」でキラキラとした華やかなムードを作り出し「眠れないくらい楽しみにしてました」と笑顔を見せたmiletは、「inside You」では一転して深く潜り込んでいくようなディープな歌声を響かせる。「心で感じてつながれる、こんな素敵な場所は他にないと思います」とap bank fesへの思いを告げ、ラスト「Anytime Anywhere」をBank Bandのスケール感ある演奏と共に高らかに歌い上げた。


Bank Band with milet
- Higher
- inside you
- Anytime Anywhere
続いての上白石萌音は「安心感を与えてくれる歌声」(亀田)、「読解力の精度、文学性が高い」(小林)というコメントの紹介VTRを経て登場。まず披露した「hiker」では、洋楽にルーツを持つmiletから一転、歌謡曲やJ-POPで育ってきた温かな手触りの歌声を響かせる。
「普段はお芝居をさせていただいてますが、歌うことが大好きで、ほそぼそと歌っていたら、小林さんと巡り会えて、こんなところに連れてきていただきました」と語り、主演した『君の名は。』から「なんでもないや(movie ver.)」を歌う。3曲目に披露した「夕陽に溶け出して」は小林武史が楽曲提供したナンバーだ。「私は『感性のボリュームを上げて』という歌詞が大好きです」と語った上白石萌音は、夕陽の映像をバックに、丁寧に、透明感ある声を響かせた。物語を感じるような歌声だった。


Bank Band with 上白石萌音
- hiker
- なんでもないや(movie ver.)
- 夕陽に溶け出して
東京QQQのパフォーマンスを経て、Mr.Childrenのライブは初日と同じく「擬態」からスタート。「海にて、心は裸になりたがる」から「HANABI」へと続ける。改めて気付くのは、都市の情景を歌った曲、混沌とした世界の中で答えのない問いを抱えながらそれでも前に進もうとする思いを描いた曲が多くセレクトされているということ。「今日は、このフェスに、『社会と暮らしと音楽と』というテーマに相応しい曲を選んで持ってきました」と桜井和寿は告げていた。
「僕らが望んだ未来、希望にもうすぐなんだという、そんな願いを込めて」と告げて披露した「Brand new planet」も、都市生活者の日常に寄り添うような「街の風景」も、きっと今回の『ap bank fes』のコンセプトの中での必然的な選曲なのだろう。
各地で戦禍の続く今の時代に切迫感を持って響く「タガタメ」、「HERO」と、後半には胸を震わせるような楽曲を続けた彼ら。ラストは「僕らにとって、フェスにとって特別な歌を」と小林武史を迎えて披露した「彩り」で締めくくった。日常の暮らしを讃えるこの曲で締めくくったことにも意義を感じた。

Mr.Children
- 擬態(with 小倉博和)
- 海にて、心は裸になりたがる
- HANABI
- Brand new planet
- 街の風景(with 小倉博和、沖祥子、イシイモモコ、小田原 ODY 友洋)
- タガタメ
- HERO
- 彩り(with 小林武史)
休憩を経て、ビジョンには『Break2 / Movie ~ 空になって』が映し出された。
映像では、「機械である僕」を語り手に、地球に暮らす生命の共通点を語り、人類の争いが悲劇を生み出してきた歴史を語る。「見えない線は、あらゆるところに引かれ続けている」と競争が我々の生きる社会にもたらす歪みを語り、その一方で共感によって「つながりあい、助け合うこと」という、人間のもう一つの側面を語る。
そういうメッセージを経ての「MESSAGE -メッセージ-」には感じ入るものがあった。
Bank Band
- MESSAGE -メッセージ- (with Salyu)
Superflyのライブは「Wildflower」からスタート。越智志帆の芯の強い歌声で会場に華やかなムードをもたらす。MCでは数年前から無農薬野菜を作っていることに触れ「発信する場所がなくてモヤモヤしていたんですけれど、先輩方がこういう場所を作ってくれて本当に感謝します」と語る。そして披露した「愛をこめて花束を」では力強くおおらかなメロディ、櫻井和寿とのハーモニーで数万人を包み込む。パワフルなロックナンバー「Alright!!」で締めくくったライブは圧巻の迫力に満ちたものだった。


Bank Band with Superfly
- Wildflower
- 愛をこめて花束を
- Alright!!
熱気冷めやらぬ空気の中「あの人の世界にたっぷり浸かってもらいたいと思います」と櫻井が紹介し、JUJUが登場。バラードナンバー「奇跡を望むなら…」をしっとりと歌い上げると、あっという間に会場の空気が変わる。アップテンポな「PLAYBACK」に続けては「今回、櫻井さんと何か一緒に歌えたらいいなと思いまして。僭越ながら私のわがままを通していただいて。櫻井さんとの時間をいただきたい」と、Mr.Childrenの「くるみ」をカバー。JUJUの吐息のまじった切なさを伝える歌声と櫻井のハリのある歌声が重なり合ってスペシャルな響きが生まれる。「やさしさで溢れるように」で締めくくったJUJUのステージは、とてもエモーショナルなものだった。


Bank Band with JUJU
- 奇跡を望むなら…
- PLAYBACK
- くるみ
- やさしさで溢れるように
そして宮本浩次が登場。「今宵の月のように」は宮本と櫻井が1本のマイクで顔を寄せ合って歌う。二人の友情を感じるようなパフォーマンスだ。さらに「悲しみの果て」と真っ向からエネルギーを放つようなエレファントカシマシのナンバーに続けては、情緒に満ちた歌心を見せるソロ名義の「冬の花」を続ける。「君の心に沢山の素敵な瞬間がやってきますように!」と告げて披露した「ハレルヤ」では笑顔でステージを駆け回り、高揚感に包まれる。
何より印象的だったのは「この場所に相応しい曲。一緒に歌おうぜ」と、櫻井と共に歌った「東京協奏曲」だった。都市の人々の暮らしや喜怒哀楽を俯瞰で見下ろして優しく包み込む曲。これがこの場所で歌われたということにも、初めてap bank fesの東京ドームで開催されたことの意味合いのひとつがあったと感じた。


Bank Band with 宮本浩次
- 今宵の月のように
- 悲しみの果て
- 冬の花
- ハレルヤ
- 東京協奏曲
宮本浩次を送り出した櫻井和寿は、「たとえどんな50年後であっても、いつも穏やかな笑顔で、大事な人と一緒にいれることを願って」と告げて、KANの「50年後も」を歌った。「さあ行くよ、東京ドーム!」と告げた「奏逢 〜Bank Bandのテーマ〜」から「ap bank fesにはこの歌が欠かせないと思ってます」と「to U」。ひとつひとつの曲に込められた真摯なメッセージが伝わる。
様々なアーティストが出演して音楽のバトンを受け渡すだけでなく、都市やテクノロジーが否応なしに変えていく人類の未来への問いかけを込めたストーリーも展開してきた今回の『ap bank fes』。そこには東京ドームという場でこのフェスを行うことの意義や意味合いへの思いもあっただろう。
最後に披露した「カラ」は、そんなことも感じる一曲だった。Salyuとmiletと上白石萌音がコーラスに声を重ねた「空になって」「いつか殻を破って」というフレーズ、そして「この出会いできっと少し未来は変わるだろう」と歌うリフレインが、じんわりと胸を震わせた。


Bank Band
- 50年後も
- 奏逢 〜Bank Bandのテーマ〜
- to U(with Salyu)
- カラ(with 上白石萌音、Salyu、milet)
全員がステージを去るとエンディングムービーへ。スタッフロールがゆっくりと流れる中、客電が灯り、まるでひとつの長編映画を観終わったような大きな余韻と共に『ap bank fes』の2日目は幕を閉じた。

TEXT:柴那典
PHOTO:橋本塁、千田俊明、山川哲矢、鈴木浩平 / 中野幸英